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パラオスタディツアーに参加して

野村 明香

 今回のツアーは、本当にいろいろな意味での勉強ができたツアーだったと思う。まず、第二次世界大戦に関する部分では、パラオだけでなく、思いがけず滞在することのできたグアムでも学ぶことができた。日本では、原爆についてや、無差別な空襲の被害などがクローズアップされているが、グアムの国立太平洋戦争歴史公園で見た映画では、全くの奇襲攻撃である真珠湾攻撃によって戦争が始まった、という取り上げかたをしていた。高校の授業で、日米の戦争観の違いについて学んではいたが、実際に自分の目と耳でたしかめてしまうと、改めて、公平に歴史を知るということは難しいことだと感じた。そしてパラオでは、まず屋外に戦争の遺物がそのままの形で残されていることに驚かされた。特に、赤く錆びた戦車や高射砲などは、博物館などで保管した方がいいのではないかと思うくらいの状態だった。しかし逆に、そのような戦争の傷痕をそのままの状態にしておくというこの状況こそが、パラオの人々の戦争に対する思いなのかもしれないと思った。慰霊塔の前にはいくつかの墓碑があり、兵士たちの戦死した当時の年齢も刻まれていて、それを見ると、こんなにも若くして死んでしまったなんて、さぞ無念だっただろうと心が痛んだ。今は美しいオレンジ・ビーチも、今こうして自分が立っているこの場所ですさまじい戦闘が繰り広げられ、多くの兵士たちが死んでいったのだと思うと背筋が寒くなった。それは、今まで日本では経験したことのないほどの生々しい戦争への嫌悪感だった。それと同時に、同じくらい強く、この平和を守らなければならないとあらためて感じた。

 そして、このツアーのメインとも言えるパラオの人々との交流の中にも、いろいろと考えさせられることがあった。ホームステイ初日、ステイ先のお父さんの生まれた村に連れていってもらった時のことだ。だいぶ荒廃しているその村の、1軒の家から小さなおばあさんが出てきて、ステイ先のお母さんと二言三言話したかと思うと、私たちに向かってなめらかな日本語で話しかけてきたのだ。今年83歳になるというそのおばあさんの日本語は、だいぶ忘れてしまったとは言いながらも、私がパラオで聞いた中でもっとも流暢な日本語だった。さらに、もっと奥の家のおばあさんもすばらしい日本語で「貧しい村、貧しい暮らし。日本から来たら驚いちゃうでしょう。日本はきれいだから。」と私に言った。私は「そんなことはないです。自然がきれいだから。」と言うのが精いっぱいだった。失礼な言い方かもしれないが、こんなにも山奥の村で、お年寄りが50年以上昔に習わされた言葉を、少しもつまることなく使って自分と会話しているという事実が、私にとってはとてもショックだった。そして、このような日本語教育を行った当時の日本がおそろしく感じられた。

 でも、楽しい思い出も多い。アイライ小学校やパラオ高校では、ほぼ同年代ということもあり、良い交流ができたのではないかと思う。特に小学生は好奇心のかたまりで、私たちとパワー全開で交流してくれたのが、私はとても嬉しかった。日本から持っていった野球道具などの贈呈式のあと、一緒に給食を食べたり、バレーボールをしたり、校舎を案内してもらったりと、時間の経つのがとても早く感じられた。だが、なんと言っても楽しかったのはホームステイの3日間だった。私と、もう一人のメンバーがステイした家は、回りに他の家が1軒もなく、生活用水は雨水、お風呂は水だけが出るホース、という日本とは全く違う環境で、とても新鮮だった。また、ホームステイ2日めには、パラオの伝統行事オメスルに参加するという貴重な体験もできた。これは、無事第一子の出産を終えた母親が親戚一同の前に登場する、というもので、陽気なパラオ人の気質の表れている楽しい儀式だった。他にも、自家用の船を海の真ん中にとめて釣りをしたり、誰もいないビーチで泳いだり、日本では絶対にやれないことを沢山経験することができた。最終日、ホストファミリーとのお別れパーティーもとても楽しかったが、その後の別れはとても辛いものだった。3日間という短い時間でも、かけがえのない時間を共にしたぶん、それぞれのホストファミリーとみんなが、本当の家族になれたと感じたのだと思う。

 また、このツアーに参加したメンバーとの関わりも、このスタディツアーにおいて大きな意味を持っていたと思う。17人の仲間、6人の引率の方々、これだけの大所帯でいれば、自分と価値観の同じ人、違う人、相性のいい人、悪い人、いろいろなタイプの人がいて当然だろう。実際、このツアー中にメンバー同士でうまく意志の疎通がはかれなくなったこともあったが、それをそのままにせず、メンバー全員で話し合いをして、お互いの関係を改善することができたことで、改めてコミュニケーションの大切さを知ることができた。

 このパラオスタディツアーを通して、本当にたくさんのことを学び、たくさんの貴重な体験をすることができた。これからの日本での生活の中でも、このかけがえのない経験と出会いを大切にしていきたいと思う。

 最後になりましたが、青年海外協力隊東京OB会の皆さんをはじめ、このスタディツアーに関わったすべての方々に感謝します。どうもありがとうございました。



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