国際協力 Developing World

アフリカルチャーゲーム

境 勝一郎

 3月4日土曜日、アイ・シー・ネットというコンサルタントとJICA有志の主催で「アフリカルチャーゲーム」が開催されました。その体験報告です。

 「アフリカルチャーゲーム」は、シミュレーションゲームの一種で、サブサハラアフリカ(モデルはザンビアだそうです)を舞台にしています。当日の参加者は約30名。NGO、大学院生、コンサルタント、国際協力銀行、アジ研、JICAといった面々でした。

 参加者はまず、男性、女性、子供の役割を選びます。それぞれ別々のマニュアルが与えられ、それに応じてロールプレイを行います。私は、男性役を選びました。

 無作為に、夫婦、そして子供が組み合わされます。アフリカという設定なので、多重結婚もあり。また、故意に独身男性、母子家庭も作られました。さらにゲーム途中の結婚、離婚、蒸発あるいは略奪婚?も可能です。

 男性役には土地をあらわす紙が与えられ、メイズ、綿花、キャッサバ、豆を自分の選択により育てます。1年が4シーズンに分けられ、指定されたシーズンに男性、女性あるいは子供の労働力を割り当てないと作物を育てられません。また、シーズンごとにハザードカードが引かれ、旱魃や病虫害発生により収穫が半減したりします。1年の終わりには収穫をカロリーに換算し、家族で消費し、余ったものは市場で売る事が出来ます。女性役の仕事は家事と赤ん坊の世話で、子供役が手伝うことは出来ますが、男性役はだめです。

 各人にはカロリーシートが渡され、1年の終わりのカロリー計算により、栄養度がAからCまで分類されます。自分の家族の畑の収穫が不十分な時は、他の家族から買ったりして自分のカロリーを高める事が出来ます。栄養度が低いBやCだと進行役がカードを引き、運が悪いと病気になって入院します。そうなると治療費や退院料といった現金が必要になります。もっと運が悪いとゲームの途中で「死亡」してしまうこともあります。

 以上は「農村」という設定の1室で行われます。加えて年2回の「バス」に乗って「町」という設定の別室に出稼ぎに行く事も出来ます。自転車を買うといつでも町に行くことができるようになります。そこでは運がいいとかなりの現金を稼ぐことも出来ますが、運が悪いと怪我をしたりして村に帰って来ることが出来ない場合もあります。また町でしか買うことが出来ない食料を家に持って帰ると家族に喜ばれます。

 ゲーム中は参加者のアイデアによって、かなり自由な展開になります。今回は村長を選ぼうということになり、立候補、選挙が行われました。私も立候補しましたが、1年目に余った食料を少々えげつなく高値で売りさばいたせいか、人気がなく、落選してしまいました。村長役は村民会議を開催し、村人が亡くなった時の互助構をしたり、バスの増便を政府(進行役)に交渉したりと、大いに活躍しましたが、ゲーム終了後、政府から金をもらっていたことがあばかれ、ブーイングを浴びていました。

 このようなロールプレイを4年分繰り替えしました。ある家族は出稼ぎで成功してしこたま財産を増やし、一方ある家族は栄養が十分に取れず家族が病気がちで、母親が「死亡」してしまったりしました。ちなみに、私の家族は女房ひとり、労働力になる子供ひとり、そして赤ん坊2人で、地道に自分の家族で消費するキャッサバやメイズを育てましたが、労働力が少ないので他の家族からそれを調達する(これは各人との交渉になります)のが悩みの種でした。運良く出稼ぎで儲けたので、村の中でも裕福な方だったと思います。

 ロールプレイの後、男性、女性、子供、それぞれの役に分かれて、「何が自分にとって一番大変だったか」「何に困ったのか」等々話し合います。男性役はやはり営農や出稼ぎのこととなりました。一方、女性役は家族の栄養状態、子供役は学校に行けない(学校も設定されています)等にコメントが集まりました。

 私も家族が少なく、労働力が少なかったため、子供を学校に生かせることは4年間というゲームの期間中ずっと出来ませんでした。また、限られた収穫の家族への配分も働き手である自分や女房、子供が優先で、赤ん坊は二の次となりました。とにかく、大人と働き手である子供が病気にならないように生きて行くのが精一杯、やっとの思いで現金や食料をためて行くという状態。作物の収穫を左右するハザードカードに皆で一喜一憂しておりました。

 ゲームですからかなり単純化している訳ですが、アフリカの農村の生活をいくらか実感し、8時間に及んだゲームが短く感じられた1日でした。このゲーム、緑の革命ゲームのバージョンアップ版だそうです。今回が日本で初めての公開実施で、ゲームキットも日本に1セットしかないとのこと。ゲームの詳細は、この貴重なゲームを所有しているアイ・シー・ネットのホームページをご参照下さい。

http://www.icnet.co.jp/KikakuKensyu/AfriCulture.htm

 また、このゲームキット、イギリスかオランダで入手可能とのことですが、在庫切れでなかなか手に入らないようです。キット購入のための連絡先は以下の通りです。ただ手に入れればすぐにできるゲームではありません。進行役(3名程必要)のノウハウ、経験が鍵ですから。

1) ETC FOUNDATION
Consultants for Development Programmes
P.O Box 64
3830 AB LEUSDEN
THE NETHERLANDS
TEL +31-(0)33-943086
FAX +31-(0)33-940791

2) IIED
International Institute for Environment and Development
3 ENDSLEIGH STREET
LONDON WC1H 0DD
U.K.
TEL +44-(0)71-3882117
FAX +44-(0)71-3882826

 最後に、ゲームの中で女房役に穀物庫を握られ、主導権を取られてしまいましたが、それは女房に財布を握られている私の現実と同じでした。いやはや…



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