国際協力 Developing World
国際協力国際協力マガジン国際協力マガジン読みもの>小さな町の小さな日本祭・ボリヴィア

小さな町の小さな日本祭・ボリヴィア

協力隊員と現地の人達との交流

by 沼田稔

 2001年 某月

 ボリヴィアの南部の小さな町、南緯22、5度・標高1866m、人口14万人のタリハという町で活動中の青年海外協力隊員4人は『日本祭』を企画。

 きっかけは、“毎週末に路上に出る露店街に紛れて自分たち日本人も何か催しを出してみよう!”というごくごく単純なものであった。

 日本祭といっても、露店街で確保可能なスペースは、せいぜい1m×2m程度の小さな場所である。

 その場所を最大限に生かして、現地のボリヴィアの人々に対して何がアピールできるか?というのが、第一の目標であった。

 4人の隊員で考えた末、まず“日本の食べ物を即売しよう”と思いついた。そして次に、客の目を引く為に “習字も行おう” と考えた。

そして日本らしい食べ物=焼き鳥
そして日本の文字の紹介=ボリヴィア人の名前を漢字で書いてみようという事で一致団結した。

 焼き鳥は3羽の鶏をさばき、一串に5つの鶏肉と、その間に玉ねぎを4こ挟んだ串を90本仕込み、タレも自家製で準備。甘い物好きのボリヴィアの人の味覚に合わせタレは甘めで仕上げた。

 日本祭当日、ボリヴィアの人の朝は早い。僕らも朝7時から机、焼き鳥のコンロ、習字などを露店まで持ち運び、場所取りを開始。警察官に場所代として1ボリビアーノス=約18円を支払って、準備OK!毎週、この日は朝の7時位から乗用車に山の様に“これでもか!”といわんばかりに商売道具と商品を積み込んで、みんな露店にやってくる。もちろん家族総出である。なので露店と露店の隙間が無い程に各店店がひしめき合っている。

 日用雑貨屋、食料品屋、バケツ屋、装飾品屋 などなどこの日だけは一つの路地が通行止めとなり、露店が広がる。いわゆる歩行者天国だ。

そんな中、日本人4人の『日本祭』は店を開いた。まずは『習字』。

 スペイン語で“貴方の名前を漢字で書きます!”と張り紙をしハッピを着てアピール。現地語はスペイン語、その他にはアイマラ語、ケチュア語とアルファベットばかりの中で生活をしているボリヴィア人の彼等には『漢字』という字が奇妙に見えるのだろう、、、すぐに人だかりが出来始めた。

そんな中、一人のおばさんが『私の名前を書いて頂戴。』と早速のお客様一号!彼女の名前はマリエラ、、、マリエラ、、マリエラ、、、と

マ=麻
リ=理
エ=絵
ラ=羅

と・・・。こんなのでいいのだろうか?と心配しながらも、丁寧に筆を進め漢字を書く。周りの人だかりも、真剣に見つめる。

マリエラ=麻理絵羅

と完成。マリエラおばさんはとっても満足の様子。まずは良い感じで手応えあり。一枚50センターボ(50セント)=9円の儲けなり

 一人が済んでしまうと、後は次から次へと“漢字で名前”のお客さんが殺到!自分たちも思っていた以上の反応で、びっくり。

マリオ=馬里雄    アルベルト=亜流部流斗
マリア=真里亜    フアン=不安   などなど、、、

10歳くらいのホルへ君には、『掘屁』・・・、ちょと可哀相な気がしたがホルへ君は満足顔!意味を尋ねられない事を祈って、漢字を書き続けました。

 さて、肝心の焼き鳥の方であるが、なかなかお客さんが買ってくれない。焼き鳥一本の値段は1ボリビアーノス=約18円1ボリビアーノスで何が買えるかというと、ジュース1本、バスの運賃である。日本で云うならば、100円くらいの感覚だろうか!?

 おそらく、この1ボリビアーノスという値段が売れない理由であろうと思った。我々日本人の感覚ならば、100円という感覚は“安く”思うのだが発展途上国の人々にとっては、“少々高い” という感覚なのだろう。

 ハンバーガーが2ボリビアーノスで買えるタリハ、靴磨きの少年が一回の靴磨きで稼ぐお金が1ボリビアーノス、

という事で、即値下げ決定。

 焼き鳥の値段を半額の50センターボ(50セント)にした。すると、次から次へと売れる!売れる!確かに、我々日本人がファーストフードのハンバーガーがいきなり半額になれば、誰でも手軽に買いに行くのと同じ感覚なのだろう。「300円が150円になった」というように考えれば納得できる。考えてみれば、物価が日本の約6分の1の国のボリヴィア、逆にいえば日本はボリビアの物価の6倍の国。例え50センタ-ボでも靴磨きの少年にとっては貴重な金額であるには違いない。

 さて、値下げをした途端に売れ行きが良くなった『焼き鳥』、味の方はというと、皆さん『Rico!(リコ=西語で「美味しい」)』と言ってくれる。タレの甘さもボリヴィア人の味覚を掴んだようだ。想うにボリヴィアの人の味覚は日本人と似ている部分があると思う。カレーライスやラーメンなども、ボリヴィアの人に食べさせてみると大概の人が『美味しい!』と言って、ペロッと食べきってしまう。

 そんなこんなで、90本用意した焼き鳥は2時間もしないうちに完売! 一度に6本買っていってくれる人もいれば、家族で一人一本ずつ買ってくれる人もいる。とにかく好評なうちに焼き鳥は売り切れてしまった!これは予想外であった。

 結果、習字は約100枚を書き上げ、焼き鳥も仕込んだ90本を完売。お昼すぎには、そろそろ店じまいをしなければならなくなってしまった。露店は夜まで続くというのに・・・。大盛況の中、予想外の店じまいの早さに4人の日本人達には驚きと嬉しさが混じっていた。そして、次回はもっと夕方までネタが続くようにしようと誓ったのであった。

 そして嬉しかったのは、当日だけではなく次の日にもあった。日本祭を行った次の日、道を歩いていると町をゆく見知らぬボリヴィア人から『今度はいつ日本祭をやるんだ!?』と、何人もの人からリクエストがあったのだ。少しでも日本人と日本の文字、日本の食べ物をこんな小さな町の人に紹介できた事に嬉しく想った。でも、『日本と中国は同じなのだろ!』と自信満々に声をかけてきたおじさんには参った!

第二回日本祭を計画中、、、



Copyright© Developing World このサイトは有限会社人の森のCSR事業として運営されています。